景色が浮かぶ盆栽ヤマコウバシ:　寄や植え四季それぞれに美しい里山の樹

摘要

ヤマコウバシはクスノキ科の落葉樹である。樹高3～5m。 東京近郊の雑木林にしばしば見る。 分布は関東地方以西で、どちらかといえば暖地系の優雅な姿の濯木である。 盆栽家にはクロモジと同属の植物といえば判りやすいだろう。 この仲間は枝を折ると引き締った良い香りがする。 ヤマコショウと呼ぶ地方もある。 ヤマコウバシも葉をもむと、爽やかなハーブのような香りがする。 茶花としても、庭園樹としても、渋味のある古典的樹種として珍重される。 品格のある樹種としての評価は定着している。ヤマコウバシに近縁の（クロモジ属）クロモジ、シロモジ、アブラチャン、タンコウバイ、最近美しい斑入り葉が見つかったカナクギノキ、いずれも茶花として貴重な早春の黄色の花である。 ヤマコウバシはそのなかでも地味な樹で、これまで園芸としては取り上げられることが少なかったのである。 それゆえ庭師や園芸家にとっても謎が多い樹だったといえるだろう。特徴は、枝枯れが少ないこと。小枝もかなりできること。これがヤマコウバシの最大の盆栽的長所とされる。 これもつい最近まで知られていなかったのである。 クロモジをまずイメージされた方は「確かに風情はあるけれども、本格的な盆栽としては枝が作りにくい樹で、革もの盆栽向き」と考えただろう。ところがヤマコウハシは、クロモジ属のなかでもっとも作りやすく、もっとも盆栽の素質があると評価が高まっている。ヤマコウバシは写真の自然樹の姿のように、この仲間の樹ではもっとも硬質感があり、いわゆる盆栽でいう雑木の作業、手入れで扱える。 クロモジの仲間では希有のことであり、他にはない。 責重な存在として盆栽界に定着することになるだろう。