我が社の旧満州工場を探し求めて

摘要

私の手もとに康徳拾壹年（昭和19）10月末付けの興亜坩堝㈱という会社の決算報告書が残っている。半世紀以上の時を経てセピア色になった和紙の報告書には，生産·販売の業績値とともに満鐵，満州三菱，満州住金他の錚々たる客先の名前も記されている。 この会社こそ，我が社の先輩達が昭和14年5月に資本金2百方円で旧奉天（現洛陽Shenyang）に設立し，6年余で歴史の流れにのみ込まれて消え去っていった会社である。 2002年5月，私は中国市場進出の願いを胸に現地へ出張する際に，何とか興亜坩堝㈱の跡を尋ねることが出来ないかと思っていたが，当社に残る記録には「奉天市に設立」とあるだけれその住所が見つからなかった。 そこで，同行することになっていた貿易部の唐克威君が，都立図書館で, 「旧満州國進出企業」という資料からその住所を「奉天市鐵西直景星街」と探し出してきた。 唐君は四川省出身で，日本の大学院卒業後すぐに当社に入社して，現在貿易部で勤務している若い社員である。