堆積学的手法によって明らかにされた海成段丘の形成過程--青森県上北平野，MIS 5e高館面構成層での試み

摘要

日本周辺の海岸平野には、中～後期更新世におけるグローバルな氷河性海水準変動を反映して形成された海成段丘が広く分布している．このような海成段丘においては，地形学的視点から段丘面の区分や編年が行われている（小池·町田，2001など）．一方，地質学的視点からは，同時代の海成層である例えば房総半島の中～上部更新続下総層群等において，堆積相解析やシーケンス層序学的解釈が行われてきている（例えばMurakoshi and Masuda，1992；Okazaki and Masuda，1995；Nishikawa and Ito，2000など）．しかし，海成段丘の発達過程を，段丘の表層地形情報と段丘を構成する地層の堆積学的情報を統合し考察した研究は，未だ十分実施されていないのが現状である（横山ほか，2002）．今回調査を実施した青森県三沢市周辺に位置する上北平野（第1図）には広く海成段丘が分布していることが古くから知られており（中川，1961），海成段丘構成層の良好な露頭が多数存在する（第2図）．これら段丘面の詳細な区分と広域テフラを用いた編年は,宮内（1985），Kuwabara（2001）等によって行われている．しかし,現在まで段丘構成層の堆積学的な検討は，総括的には行われていない．そこで，我々は平成15年春に，上北平野において一括して扱われている海成段丘のうちMIS（海洋酸素同位体比ステージ）5eに形成された高館段丘およびその面構成層を研究対象として，海成段丘面の成立過程解明に関する堆積学的検討を予察的に試みた．