地質標本館と特別展--富士山特別展の開催に寄せて

摘要

地質標本館の大きなアンモナイト化石の前で，一人の少年が屈み込むようにしていました．背格好からすると小学校低学年でしょうか．そばに解説が置かれていますが，ほとhど目に入っていないようです．表から裏から，舐めるようにアンモナイトを眺め回し，手のひらで押してみたり撫でたりしていたかと思うと，ついには鼻を近づけてにおいを嗅ざました．少年は，自分のもつ記憶と感覚を総動員して，未知の物体を理解しようとしているように見えました．「人間は，能力をフル稼働させて認識能力を広げる過程に快感を覚える動物である」私は少年のあまりに真剣な様子を見ながら，ある脳科学者の言葉を思い出していました．