ラット大腿皮質骨の力学的性質と骨密度との関係

摘要

骨組織には皮質骨（緻密骨）と海綿骨とがあり，皮質骨組織成分はおおよそ水分が15％，無機質が50％，有機質が35％の割合でそれぞれ構成されている．骨中の無機質成分はリン酸カルシウムであり，ハイドロキシアパタイトとよばれる結晶構造体である．一方，骨内部の有機質成分は蛋白質のコラーゲンや多糖体の一種であるグリコサミノグリカンとよばれる物質である．骨組織の力学的特性は整形外科領域にとって最も重要で興味ある研究分野であるが，未だ不明な点が多い．臨床においては骨の強度診断として，DXA（Dual energy X-ray Absorptiometry；二重エネルギX線吸収法）を利用して，骨に含まれるミネラル量を測定するのが一般的である．また，皮質骨を対象としたバイオメカニクスの研究には，ヒトの骨が入手困難なため，ウシ，ブタ，ラットおよびマウス等の動物が使われることが多い．しかしながら，ウシやブタの長管骨を構成する皮質骨のほとhどは，plexiifom boneとよばれる煉瓦状組織の骨である．ヒトやラットの長管骨における皮質骨はオステオン（骨単位）がみられるHaversian boneであり，Plexiiform bone とは異なる組織形態である．plexiiform boneは急成長する隅蹄類の動物等に特徴的な頑丈な骨で，Haversian boneとは異なる力学的特性を有することが知られており，ウシ等の動物実験の結果からヒトの皮質骨の力学的挙動を推定するには問題が残る．