医用診断への超音波法の適用

摘要

超音波の医用診断には，生体の動きをリアルタイムで観察できる電子リニア走査法が一般によく使用されている．この診断には，直線状に配置した多数の探触子から超音波を発射し，その際に生体の組織境界から得られるエコー強さを輝度変調してブラウン管面上に生体の断層像を表示するBモード表示法が用いられている．しかし，このような超音波断層画像装置では，人の骨内部の状態を正確に把握することが難しいとされてきた．そこで，筆者らは広帯域周波数特性を有し，しかもダンピングの大きな受信エコー特性を有する工業用超音波探触子を用い，境界面からのエコー波形から骨内部の状態を正確に把握するための研究を1990年より行ってきた．本解説では，筆者らが整形外科分野における骨の医用診断や手術などに超音波を利用した研究の中から，大腿骨と人工股関節システム間のゆるみ診断，骨折部固定用の髄内釘横止め穴の位置検出，踵骨音速による骨粗鬆症診断などについて紹介する．