ゴルフボールの硬さと反撥性能の実験的評価

摘要

ゴルフボールのコンプレッションと反撥特性の関係を，4社の製品（15種類のボール）について静的圧縮試験と衝撃（衝突）試験を行って詳細に調べた．その結果を，まとめてみるとつぎのようになる．(1)ボールのコンプレッションは静的圧縮試験における変位速度に依存するが，室温下では5.0mm/min以下ではほぼ一定となる（各社が公表している自社の各ボールに対するコンプレッション値は，測定時の変位速度が異なるので直接比較できないことに注意されたい）．(2)アルミ合金，チタン合金，ステンレス鋼の3つの異なる弾性棒により測定したボールの反撥係数を比較した場合，調べた入射速度の範囲内(20m/s～50m/s)では，ステンレス鋼が高い反撥係数値を示し，クラブヘッド材料としては有利である（しかし比強度では，チタン合金がはるかに優れている）．(3)ボールの反撥係数は入射速度の上昇（最大50m/s）と共に0.1前後低下するが，一定の入射速度においては，コンプレッションの高いボールの方が反撥係数は高くなる．なお，入射速度の上昇に伴う反撥係数の低下は，衝撃負荷除荷－変形ヒステリシス過程でボール内部でのエネルギー損失量が増大するためである．(4)ボールのコンプレッションは，その構造（材質）と強い関連性があり〈糸巻き＜3ピース＜2ピース〉の順に大きくなる．(5)ボールのPGAコンプレッションは，通常のコンプレッションの2次関数としてほぼ正確に表現できる．なお，最近開発された新しい4層構造の4ピースボールについてもすでにコンプレッションと反撥特性について測定を行なったが，それらの結果については，著者の報告を参照されたい．本解説に示した種々のゴルフボールに関するデータが，初心者を含めたゴルファーのボール選択についての有効な指針となれば幸いである．