弾性解析領域の境界条件を再構築する実験－数値ハイブリッド解析

摘要

現在実験力学の分野において，光学的な変位計測法の発展により全視野で高精度な変位計測が可能となってきた．特にデジタル画像相関法は、①複雑な光学系を必要としない，②対象とする材料を限定しない，③非接触で計測可能である，④高精度に変位計測可能であるなどの特徴を有し，今後様々な分野での応用が期待されている．しかしこれら実験による計測では実験誤差が避けられない．このため全視野計測された変位場は，応力のつりあい方程式を満足せず応力やひずみの解析精度が低下するといった問題が生じる．このような背景からこれら光学的変位計測法と，数値解析または理論解析とを組み合わせたハイブリッド解析が注目されている．ここでハイブリッド解析とは，二つ以上の解析法を組み合わせ，単独では解析困難であったり，または限界があった問題点を克服する手法である．既存の研究では，FEM解析に必要な節点に光学的手法で得られる変位データを入力して応力やひずみを解析する方法，または，ハイブリッド解析の対象領域（以下，ハイブリッド領域とする）の外周境界に実験より得られる変位を入力して実験誤差を最小化する方法などの報告があり，それぞれ有効性が示されている．しかし，これら従来の解析方法では「入力している変位データ自身にも実験誤差が混入している」場合が多く，境界条件にその誤差が混入され，解析結果に悪影響を与える．そこで本研究では，デジタル画像相関法により得られるハイブリッド領域内全視野変位計測データを元に，ハイブリッド領域の境界条件，すなわちハイブリッド領域境界上の変位データを再構築し，決定した境界条件を用いてハイブリッド領域内の全体の変位場を解析するハイブリッド手法について提案する．提案するハイブリッド解析では，既存のハイブリッド法と比べ，ハイブリッド領域境界の節点の誤差を低減できることにより，従来に増して精確な解析ができる事を確認した．