再生医療に向けた力学的刺激による間葉系幹細胞の分化制御

摘要

この治療の実現のため，幹細胞の様々な分化研究が行われている．特に，各種リガンドとレセプターの相互作用，いわゆる生化学的刺激による分化誘導に関する研究が広く行われているが，この方法は腫瘍形成などの危険性を完全に払拭できるまでには至っていない．一方，圧力やせh断応力などの力学的刺激がin vivoの細胞の構造や機能の調整に重要な役割を果たしており，in vitroで培養を行う幹細胞もその例外ではないということが近年明らかになってきた．特に繰り返し伸縮によって，間葉系幹細胞の腱·靭帯細胞分化が促進されると報告されている．また同時に，伸縮負荷を低減する角度に細胞を整列させる作用も確認されている．力学的刺激という，生化学的刺激とは異なり，単純明快なアプローチによる幹細胞の分化制御が可能となれば，細胞機能の解明や再生医療に大きく貢献することができる．本稿では，繰返し伸縮刺激に対する間葉系幹細胞の応答に関して，遺伝子，細胞内外タンパク質の発現，伸縮刺激のシグナルパスウェイに関する点から紹介する．