熱音響冷却システムの実用化に関する検討 : ループ管方式の低温度差駆動に向けた薄膜の利用について

摘要

本報告では,熱音響冷却システムであるループ管の低温度差駆動を目的とし,管内に薄膜を挿入した.まず入力熱エネルギー一定の条件下で,薄膜の挿入位置がプライムムーバにおいて熱交換を行うスタックの上端と下端の温度差に与える影響に注目した.薄膜の挿入位置をプライムムーバに接近させることで,スタックにおける音圧と粒子速度の位相差の調節および粘性抵抗の減少が引き起こされ,熱から音へのエネルギー変換効率が向上し,低温度差での駆動が確認できた.次に薄膜の挿入位置は変化させず,入力熱エネルギーを低下させることで低温度差駆動を行った.温度差が低下することでスタック流路内の粘性境界層が薄くなり,スタックが管内の音場に与える境界条件のとしての働きが弱くなり位相差分布がシフトした.2つの測定により,薄膜が管内の音場に与える影響を検証し,薄膜を利用したループ管の低温度差駆動に成功した.