AI時代の医療職業務: AIに医療は取って替わられるか？

摘要

1.今のAIブームは3回目: 人工知能（artificial intelligence : AI)によって，大半の職業が取って替わられる，シンギユラリテイの起こる2045年，AIは人間を超える，といった言葉が飛び交っている.しかし，今のAIブームは3回目のもので，過去のブームでも同じようなことが言われていた.筆者は2回目のブームの際に工学部に在籍し，この分野を研究した後，医学部に学士入学した.その時以来の経験と観察から，確かに取って替わったものと，そうはならなかったものに目を向けたい. 1回目のAIブームは，60年代の，電子計算機の商用化につれてのものであった.いわゆる単純計算が計算機に取って替わられた.その後，80年代を迎え，計算機の能力が上がり，単なる数値計算，文字列だけでなく，簡単な述語論理も扱えるようになった.「АならばВである」といったものである.そこで，「第3世代セフエム系抗生剤はグラム陰性桿菌にも効く」といった知識の形で，個々の抗生剤の抗菌スペクトルを表現して，筆者は抗生剤支援システムANTICIPATORを， 元?日本薬剤師会副会長の土屋先生たちとともに開発した，図1はその画面である.感染症診断名を選ぶと，おすすめの抗生剤がリストアップされる.