ドラッグリポジショニング/ドラッグリプロフアイリング安全で安い薬を早く確実に患者へ届ける創薬戦略

摘要

2010年問題の本質は製薬企業における新薬開発の停滞である.この主な原因は，臨床試験で予 想外の副作用が発見され，臨床試験が失敗することである.そこで私は，ヒトでの安全性が確認さ れている既存薬(既承認薬）の新しい薬理作用を発見するなどして，別の疾患治療薬として適応拡大 する創薬戦略（ドラッグリポジショニング，DR)を提唱している.特に，既存薬の作用（ターゲット 分子）に関する網羅的解析（ドラッグリプロフアイリング）を基盤としたDRを推進している.DRの利点は，臨床試験が予想外の副作用で失敗する確率が格段に低いこと，医薬品開発にかかる時間 とコストを削減できること，候補医薬品を患者に投与し効果を確認してから本格的な医薬品開発を 行うという戦略を取れることなどである.2012年度に入ってから，我が国でDRに関する動きが 産官学で活発になっている.そこで本稿では，DRに関する最近の動きを含め，その背景，特徴などを概説する.