ロンドンオリンピック・パラリンピックにおける競技会場を利用したシティプロモーション戦略 グリニッジ馬術会場の例

摘要

先進都市で開催されたロンドン五輪において、シティプロモーションの観点から重要な役割を担ったのが競技会場である。まず、馬術の競技会場としてロンドンを象徴する場所として、また世界標準時を制定するグリニッジ天文台で有名なグリニッジ王立公園を選定した。競技会場は規模、用途、世界遺産という敷地条件に対して周囲の景観を取り込むように設計され、また施工、撤去を考慮し、単管パイプと布による簡素な仮設した。その簡素さを補うために新旧の歴史が混在する観光都市ロンドンの景観を最大限活用し、躍動する選手の姿と共に絵になる五輪(Picturesque Olympics)とした。その景観を魅せたのは大会期間中に都市を訪れる観光客やロンドン市民だけでなく、将来的にロンドンを訪れるであろうテレビ画面の向こうにいる世界中の視聴者であり、大会後には負の遺産とならないように完全に撤去した。本研究ではロンドン五輪のグリニッジ馬術会場を例に調査したが、五輪では、ソフトである都市景観を最大限魅せることと、それに寄り添うようにハードである競技場を設計するという、統合的な考え方こそが戦略的なシティプロモーションには不可欠であると結論付ける。