リスクアセスメントとヒューマンエラー対策 第3回 レアアースの輸出制限とリスクマネジメント

摘要

2010年9月に中国から我が国へのレアアース輸出に支障が生じたと伝えられ、日本政府はその状況調査を行い、中国政府に改善を申し入れた。各紙はこの件を中国政府の「禁輸措置」であると非難し、あるいは「中国リスク」の高まりの例であると報道した。それ以前から中国の政治経済動向が国際的なリスク要因となっていると見る向きがあった。とくに天然資源産出国である中国がレアアースの輸出を規制している、あるいは資源消費国である中国が世界の資源を買い占めるための資源外交に積極的であるといった類の危機感を煽る報道はしばしばあった。報道内容の信憑性を別にしても、レアアースは我が国産業にとって不可欠の原材料であり、その確保が従来以上に重要な問題となったことは確かである。本件を突発的な紛争としてではなく、中長期的観点から冷静に分析すべき問題と捉え、輸入が回復するよう実利的な対応策をとることが望まれる。また適切にマネージしなければならない国家のリスクであるので、本稿は中国のレアアース輸出に関する最近の動向を取り上げ、その本質について論じることとする。