国内携帯電話通信事業者戦略の分析－携帯電話端末機の機能にみる市場戦略の動的変化の可視化

摘要

携帯電話産業は世界的に見て出荷台数約10億台のマーケットに成長し、現在も市場は成長し続けている．その中で国内携帯電話産業は世界でもっとも携帯電話端末機の世代交代が早く、且つ加入者1人当たりの月間売上高（ARPU: Average Revenue per User）に対するデータ通信料の割合が多いといわれている．一方、通信事業者にとって売上げ向上が至上命題であったが、売上げの向上は価格競争や販売経路·プロモーション強化により契約者数の増加に影響を受ける．しかし、通信事業者間での価格差別化は販売奨励などの制度もあり明確な差別化は困難だった．よって、売上げを向上させるためにはARPUを向上させる必要があり、ARPU向上には差別化可能なポイントは機能であったと思われる．本論文では、国内携帯電話通信産業の大手通信事業者各社によって2000年から2007年の間に発表·発売した全ての携帯電話端末機の機能に対して主成分分析を行い、携帯電話機能差別化の動的変化を定量的に分析し、大手通信事業者三社の市場戦略を考察する．そして、機能差別化の動的分析により、各通信事業者の戦略が同質化するものであったかを明らかにし、当該機能差別化の意義、成功要因について考察する。