次世代施設園芸システムの確立に向かう：我が国の施設園芸産業の現状と展望

摘要

我が国の施設園芸は，戦後の農地解放の動きとほぼリンクする形で，農業用塩化ビニルフィルム（PVC：農ビフィルム）の米国からの導入·開発·国内生産を契機として，昭和30年（1955年）頃から急速に発展した技術である。それまでは，施設園芸といえば，極めて高価なガラス温室，或いはガラスフレームや油障子を用いた育苗フレームを利用したものが中心であったが，ガラス温室は，一部の富裕層向けの高級野菜や，蘭などの花井，マスカットなど高級ブドウを中心とした果樹栽培が中心で，一般庶民を対象とした商業生産技術とは言えなかった。それが極薄いプラスチックフィルム（ガラスと比べ格段に安価で軽量，形にも自由度があった）の導入により，比較的資本力が小さい一般生産者でも導入可能な技術として，まずはトンネル青苗の資材として活用され，作型の前進に大きく寄与した。その後，まもなく木骨竹幌ハウスに拡大され，施設栽培の持続的発展につながった。