大気中における微小粒子状物質（PM_(2.5)）汚染の現状と対策－第3回 PM_(2.5)に係る越境汚染と低減対策の課題

摘要

2014 年夏季と秋季に関東の内陸部加須（騎西: 都心より北北西約 40km）における PM_(2.5) 中のバイオマス由来の有機分子マーカーの大気中濃度の経日変動を図 29 に示す（Sasaka，et al., 2017）。イソプレン由来の 2-メチルテトロールと α-ピネン由来の cis-ピノン酸の濃度は日中に増加して夜間に減少するという周期的変動を繰り返し，光化学的な二次生成を示唆しており，微弱ではあるが同様の傾向は秋季にも観測された。2-メチルテトロールと cis-ピノン酸の濃度は夏季と秋季で逆転していたが，照葉樹の落葉に伴いイソプレンの放出が寒候期には抑制されるのに対し，落葉が少ない松柏類由来の α-ピネンの放出はあまり抑制されないことが一因と考えられる。なお，バイオマス燃焼由来のレボグルコサン濃度は，野焼きが多く見られる秋季には平均濃度で夏季の10 倍以上も高い濃度で推移していた。