ポリ塩化ビニルを被覆したガラス繊維織物のリサイクル：第1報 リサイクル射出成形過程における塩化水素ガスの発生抑制

摘要

現在，われわれの生活の中で石油を原料とした合成繊維の繊維製品は，欠かせないものとなっている．その中でもポリ塩化ビニル（以下，"PVC"と略す）は，他の素材と比較しても原料としての石油の利用率が低く，生産コストも安いこと，様々な安定剤を加えることによって特殊な加工が容易にできる等々の理由から，繊維製品として幅広く使用されている．PVCをコーティングしたガラス繊維製品もその一つであり，テント地やシートとして多く使用されている．そのため，これらの繊維製品の裁断屑も産業廃棄物として大量に発生している．しかしながら，PVC をコーティングしているために，その処分方法が問題となっている．PVCを含む繊維製品を焼却処分すると，ダイオキシンが発生する可能性がある．ダイオキシンは燃焼ガスが300°C前後に冷却される排ガス処理設備で発生し，捕集された飛灰や排ガス中に含まれるといわれている．このダイオキシンは無色無臭の固体であり，環境中では安定で分解されにくいという性質がある．また，生物に対する毒性も非常に強く，癌や先天性異常の可能性も指摘されている．