結晶核剤の基礎と高性能核剤による高分子材料の機能向上

摘要

結晶性高分子の諸物性は結晶化状態に大きく左右される．実際の成形加工においては過冷却度が大きいことから，結晶化度は当該高分子が有する到達可能な結晶化度より低く潜在的な性能を充分に引き出せていないのが実情である．また結晶化速度が遅い高分子にあっては結晶化促進による生産性の向上は大きな利点である．このような実用上の問題点を解決し，結晶性高分子の潜在能力を引き出す添加剤のひとつが核剤である．核剤は核生成速度を加速することで結晶化を促進する．核剤の作用機構の本質は核剤の結晶と高分子の結晶との間の「エピタキシー」であることが，過去の研究により明らかにされている．本稿では核剤の作用機構について解説した後，核剤の使用時の性能や注意点についても述べる．