受粉後の低夜温がパッシヨンフルーツの結実に及ぼす影響

摘要

ノッションフルーツの花芽分化には気温（Menzel et al.; 1987)や日長（Chang and Cheng, 1992)が影響 するとされるが，条件がよければ周年開花して結実す る.日本では，西南暖地の施設栽培で冬季に加温ゃ電 照をおこない周年出荷する作型が開発されている（熊 本ら，2017).温帯の春や秋には気温の日較差が大きくなる.し かし，パッションフルーツの結実に関する温度応答 はよくわかっていない.高い昼/夜温（30°C/25°C 以上）がパッションフルーツの結実率を低下させ た（Utsunomiya, 1992)—方，開花期の最低気温（15-25 °C)は結実に影響しなかった（松田ら，2005). パッションフルーツの花は昼頃に開花して受粉がおこ なわれる.その後18時間以内に受精が観察された（石 畑ら，1987)ことが報告されている.受粉した当日の 夜に上記よりさらに低い10°C前後の気温に遭遇する と花粉管の伸長が抑制されて受精しにくくなり，結実 が低下する可能性が考えられる.花器の温度応答を正確に評価するためには，植物体 におけるそれ以外の器官への影響を除き，花の周囲環 境のみの局所的な温度制御をおこなう必要がある.こ のような局所的な温度制御法によって，これまで，ド リアン（Kozai et al., 2014)やチェリモャ（Matsuda et al, 2015)の結実を低下させる低温度域が明らかにさ れてきた：ドリアンでは15°C以下の低夜温によって 受精が阻害された一方，チヱリモャでは10°C未満の低夜温によつて結実が阻害された.