高感度·交番磁気力顕微鏡探針の開発に向けた高磁化率·超常磁Co-GdO_xダラニュラー合金薄膜の作製

摘要

我々は，試料表面近傍での磁場計測を実現することで空間分解能を向上させた交番磁気力顕微鏡(alternating magnetic force microscopy; A-MFM)を開発した. A-MFMは，探針試料間に交番磁気力を発生させることで誘起する探針振動の周波数変調現象を利用する.これまで観察試料に合わせた磁性探針を開発して，様々な磁性材料や磁気デバイスの磁場観察を行ってきた.ここで，強い直流磁場が発生する永久磁石等では，従来のソフト磁性探針では探針磁化が試料磁場により飽和し，外部から探針磁化を周期的に変化させるための交流磁場を印加しても探針磁化が変化しないので，探針振動に周波数変調が生じない問題が生じる.このため，磁化が飽和しない高磁化率の超常磁性薄膜を用いた高感度·超常磁性探針の開発が必要となる.高感度·超常磁性探針が開発できれば磁気記録へッド等の交流磁場計測への応用も期待できる.昨年，我々は，磁化率χの大きなCo-GdO_x系グラニュラー合金薄膜の作製に成功したことを報告した.本薄膜のχの最大値は1.7×10~(-5)H/mであり，報告があるCo_(36)Al_(22)O_(42)超常磁性薄膜の2.6×10~(-6)H/mと比較して7倍程度大きい.本研究では，大きな磁化率と構造との相関解明のために，Co-GdO_x薄膜の磁化曲線のランジュバン関数による磁性結晶粒径や磁性結晶粒の体積分率の解析を行い，TEM観察結果と比較検討した.