平成23年（2011年）東北地方太平洋沖地震による 津波被災農地における平成23年春期除塩作業の 実施状況と今後の課題

摘要

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震 に伴う津波により，沿岸部の農地が広範囲にわたって流 失、冠水等の被害を受けた。その農地面積は，青森，岩 手，宮城，福島，茨城，千葉6県の合計で水田が20,151 ha,畑が3,449ha,計23,600haと推定されている（Table1)"。津波による具体的な被災状況は場所によって大きく異 なっている。津波が到達した最も内陸側では，津波が畦 畔を乗り越えて侵入するのではなく，海水のみが排水路 等から逆流して浸入し，その後引いただけの農地もあつ た（Fig.l)。しかし，一般に沿岸部に近づくほど，海水 は畦畔を越流して農地に浸入するようになり，海水と同 時に塩分を含hだ土砂，ヘドロ，瓦礫等も流入した。海岸付近では土砂が厚く堆積して，従前の区画がわからな くなつた農地も多い。また，地震に伴う地盤沈下や排水 施設の被災によって排水条件力I悪化し，津波の後，長い 期間海水が引かず，また海水が引いてもその後の降雨で 繰り返し灌水状態になった農地も見られた2)。津波によ る塩分の浸入は，被災農地で最も一般的な被害の形態で あり，津波被災農地において除塩作業を行うには，その 前提条件として，用排水の水利施設の機能が回復してお り，かつ農地内の瓦礫や土砂等の撤去が済hでいること が必要となる。従って，農地復旧の観点からは，除塩作 業は営農再開に向けた最終段階での作業となる。そのため，震災後，Fig.lのような比較的被害の小さな津波被災農地を対象として，平成23年度の作付けのために l,800haの農地（5月20日までの集計)3)で除塩事業が実 施され，除塩作業が終わつた水田では田植えが行われた (Fig.2).