卵胞活性化による新しい不妊治療

摘要

早発卵巣不全は40歳前に閉経する疾患であり，自 己の卵子で妊娠することは困難である。卵胞発育に は，ゴナド卜ロピンによる内分泌的な調節が重要であ るが，胞状卵胞期以前の未熟な卵胞の発育に関しては， 未だ不明の部分が多い。我々は，休眠原始卵胞の活性 化にPI3K-Akt-Foxo3経路が重要であることを見出し， PTEN抑制剤およびPI3K活性化剤を用いてPI3K-AW 経路を活性化することで卵胞の人為的活性化に成功し た。さらに，卵巣の断片化により2次卵胞の発育が促 進されることを見出し，その分子機構にHipppシグナ ルが関与していることを明らかにした。卵巣の断片化 は卵胞発育の主体となる卵巣顆粒膜細胞のァクチン重 合化をひきおこし，その結果Hippoシグナルが抑制さ れ，YAPの核内移行と引き続く CCN成長因子の産生 がおこり，2次卵胞の発育が促進されることを示した。 我々は，この2つの方法を組み合わせることで，早発 卵巣不全患者に対する新たな不妊治療法を開発し，自 己卵子での妊娠,分娩に成功している。