臍帯血移植の現状と展望

摘要

近年臍帯血（CB)は，HLA—致血縁の代替ドナ-と して難治性造血器疾患に対する同種造血幹細胞移植 に広く利用されている。CBは他の幹細胞源と比べて 2抗原までのHLA不一致が許容できるため，90%以 上の患者に供給可能であること，迅速に供給できるこ と，ドナ一にリスクがないことなどの利点を有する一 方，生着不全率が高く，移植後早期の治療関連合併症、 死亡率が高いことが問題である。また，免疫学的に未 熟で移植片対宿主病(GVHD)が少ないと考えられて し、たが，移植後早期に特有の同種免疫反応を発症した り，あるいは重症急性GVHDの発症頻度は非血縁骨 髄ゃ末梢血と同等であることもわかってきた。生着不 全にも，単純な細胞数不足だけではなく，早期の同種 免疫反応の関与が示されている。このように，臍帯血 の免疫細胞は，当初考えられた以上に移植後早期から非常に活発であり，移植後経過に重大な影轚を及ぼす ことが示されている。