磯焼け地帯で順応的に進めるコンブ増殖場造成(総説)

摘要

コンブ増殖には.新規漁場として投石を行う漁場造成 に関する技術とコンブの生産性を回復する漁場改良に関 する技術がある。コンブ（コンブ類は多様であり，本稿 で使うコンブとは北海道の磯焼け地帯に生育するホソメコンブSaccharina jafwmca var. をfeす)は波おによる付着基質の転倒等で新しい着生面が露出すると繁 茂しやすい。新しい面に生物が着生すると優占種は短命 な種から長命な種へ遷移する力5,コンブは遷移の初期に 優占しやすい種である。遷移が進むと他の長命な褐藻や 紅藻.付着動物が優占し，コンブの生産量が減少する。 太平洋側の親潮寒流域では栄養塩濃度が髙ぐコンブ以 外の海藻が基質上に優占しやすいので.コンブの生産性 を回復させるため.高圧水噴射やチェーン振り等により 雑海藻駆除を実施している。一方，日本海の対馬暖流域 では表層の栄養塩濃度が低ぐゥ二等の植食性動物の食害で海藻が生えない"磯焼け"が広い範囲で継続してい る（例えば，藤田り。コンブ藻場の衰退はァヮビ類（本 稿のァヮビとは，主に北海道に生息するェゾァヮビNordotis discusみhannaiを指す）等の餌料不足をもたら し，磯根資源が減少することから，漁場造成として投石 が実施されている。筆者は日本海でのコンブ増殖試験や 磯焼け対策に取り組hでいるが.本報では磯焼け域にお けるコンブ増殖場の造成についての考え方を整理した。