森林生態系での放射性物質の動態一過去の研究事例から予 測される状況と課題一

摘要

日本の国土は森林の割合が高く、福島県は71%が森林である。すなわち、福 島第一原子力発電所の事故（以下、福島 原発事故）によって大気中に放出された 放射性物質の多くは森林に存在してお り、森林における放射性物質の行く末は、 環境全体における放射性物質の将来の状 態を大きく左右する。また、森林は多く の生物が共存する代表的な生態系の一つ であり、人にとっては、木材、食料、水、 燃焼等の供給源として重要である。放射 性物質による森林の汚染は今回が初めて のことではなく、大気中核実験やチェル ノブイリ原子力発電所の事故(以下、チェ ルノブイリ事故）等における先行事例が ある。特に、チェルノブイリ事故後は ヨーロッパを中心に多くの分析データが収集され、森林での放射性セシウムの動 きに加えて、キノコ（菌類）のように放 射性セシゥムを特異的に取り込む生物が 存在し、土壌への蓄積にも関与している こと等が明らかとなっている。食物連鎖 による核種移行の重要性も明らかになつ た。これらの知見は、国際会議のプロシー デイングを始め、多くが出版物としてま 'とめられている（1'2)。