Mitchell博士のNature論文

摘要

生命はエネルギーの流れです．そのATPの大部分の源泉である唯一の酵素がATP合成酵素（F_0F_1）で，光合成から酸化的リン酸化まで生物界に共通です．このF_0F_1を生涯の課題と決めた大学院在学中に最も感銘を受けた論文が，P. Mitchell（図1）の"化学浸透圧説（chemi-osmotictheory）"という大胆な仮説を提案した論文でした（図2）1）．ATP＋H_2O→ADP十Pi十7kcalの加水分解反応でエネルギーが放出されるのですから，ATPの合成には水を除くエネルギー要求段階があるはずです。 当時は酸化的リン酸化は電子伝達のエネルギーによって図3左のようにX～Yとし－、う高エネルギー脱水化合物を経てⅩ～Pという高エネルギーl）＞酸化合物ができⅩ～PがADPと反応してATPを作るという"化学説（chemicaltheory）"が正統派でした．これは解糖系で酸イヒによって1，3－ジホスホグリセリン酸摘エネルギーリン酸化合物）ができて，ADPにリン酸を移してATPを作るのを類推したのです．