日本產南方系ホソダヮテ属

摘要

海で囲まれた日本は,多種多様なおよそ1,500種の海藻が生育する海藻の国である1)。その豊かな海藻を日本人は太古の昔から食料として利用していたと考えられ,島根県の猪目洞窟や高知県の龍河洞窟など,各地の耦文?弥生時代の遺跡から貝殻や動物の骨とともに海藻と思われる痕跡が発見されているト。主に沿岸域に住む人々に食料として利用された海藻であるが,時代が進むにつれ,海藻は塩分やミネラル類の貴重な摂取源として珍重され,飛鳥時代の701年に制定された日本で最初の律令である大宝律令では,29種の海産物のうち,ノリ類,テングサ類,ワカメなど8種の海藻が貢ぎ物として選定されている。また平安時代の967年に施行された延喜式では,13種の海藻が貢ぎ物として記され,さらに高官にだけ,“紫菜(ムラサキノリ)”や“海松(ミル)”が食料として支給されていた。当時の海藻は上流階級の食べ物とされていたが,それでも献上の対象となった海藻はわずか10数種である。日本には献上された種以外にも多様な海藻が生育しており,海沿ぃに住む人々にとっては当たり前の食材として,海藻食の文化は着々と受け継がれていたものと思われる。そして江戸時代になりノリの養殖が可能となると,ノリやそのほかの海藻が市場で流通するようになり,食材としての海藻が海沿íゝの人だけではなく,広く庶民の間にも広まるようになった。