ウキゴリ属魚類の生活史進化

摘要

ウキゴリ属Gymnogobiusは,ハゼ亜目魚類の分布の北縁付近にあたる極東域(日本列島とその周辺,サハリン,沿海州,朝鮮半島,中国大陸など)に分布する。ジュズ力ヶハゼ複合種群において分類学的に未解決な部分を残すものの,日本産魚類検索第三版3)では16種が記載されている。本属の特徴は,キセルハゼとクボハゼを除き,その名が示すとおり成魚になっても浮遊する生活様式をもつこと(種により程度は異なる)と,多様な塩分環境に適応し,内湾型から汽水型,淡水性両側回遊型,湖沼型および河川型まで,さまざまな生活史型を有することである(表1)。ここでは,このような生活史型がどのように進化し,また,その地史的背景はどうであったのかについて考察する。