日本産南方系ホンダワラ属

摘要

“海藻”と聞くとワカメやコンブ，ヒジキなど，普段われわれの食卓にのぼるものを想像する人が多いが，本連載の主題であるホンダワラ類もこれらと同じ褐藻に分類される海藻の仲間である。ヒジキもホンダワラ類に含まれる。同じ海藻のなかでもホンダワラ類がほかの海藻と大きく違うところは，ワカメやコンブが1枚の葉状部に茎がついたひらひらとした形状なのに対し，ホンダワラ類は，葉?茎?根（付着器）と陸上の植物のように各部位が分化し発達しているところである。さらには葉が変形した気胞とよばれる空気が入った器官により，海中でも岩から直立して生育することができる。海中ではまるで陸上の森のように美しい景観を形成し，このホンダワラ類の生える群落を藻場?ガラモ場?海中林などとよぶ（図1）。地上の森やジャングルに多くの生物が生息しているのと同様に，海中の森である藻場にも多くの生物が生息している。生物多様性の高いホンダワラ類の藻場は，日本沿岸域での生態系のなかでとても重要な役割を担っている。