島袋寛盛日本産南方系ホンダワラ属【19】南日本産マメ ツワラSargassum pilulirerum

摘要

ホンダワラ属は大型海藻のなかで最も多くの種を含み,今までに世界で900種以上が記載され,現在も変種も含め500種以上が現行の種として認められている1)。そのため属をなhらかの要素により細分化したほうが種の理解がしやすい。ホンダワラ属では亜属のレベルや,さらにそれ以下の階級での細分化についていくつかの試みがある。そのなかでも1889年にJ. Agardhが提唱した,ホンダワラ属を藻体下部の葉や枝のでき方,気胞や生殖器床などの形態的特徴によりPhyllotrichia, Schizophycus, Bactrophycus, Arthorophycus, Sargassumの5つの亜属に分ける考え方が2),つい最近までひろく採用されていた。5亜属のうち Phyllotrichia亜属の特徴は,茎から螺旋状に生じる葉状体の広がりから主枝が発達し,主枝から平面的に側生した部位が発達し葉となることである。そのため葉と枝の区別はあまり明確ではない。気胞の多くは球形で円頂となり,冠葉はない。また生殖器床に棘がないなどの特徴もある。そのほとhどは南半球のオーストラリアやニュージーランドに生育し,代表的なものにSargassum sonderiやS. decipiens, S. kendrickがある(図1)3~5)。扁圧な主枝から平面的に葉や枝が生じ,気胞が球形で冠葉がない日本産のホンダワラ属は,マメタワラ piluliferumとエンドウモク S. yendoiだけである。しかしエンドウモクは初期発生時に藻体が葉と枝と明確に区別されて茎から生じるためSargassum亜属に含まれる6)。よって,マメタワラは北半球に分布する唯一のPhyllotrichia亜属とされてきた7,8)。しかし,発達した茎を有する南半球の種に比べ,日本のマメタワラを同亜属とするには分布域だけではなく形態的にも違和感がある。一方,本亜属とSchizophycus亜属を分ける大きな違いは気胞の冠葉の有無のみである9)。よって日本産マメタワラが所属する亜属についてもいくつかの議論があった。しかし近年になり,外部形態の特徴だけではなく遺伝的な解析も分類学的な検討手法に取り入れられるようになって,Schizophycus亜属の種とマメタワラはSargassum亜属に含めることが提案された10)。