1次元量子磁性体であるアルモクライシヱブスク鉱K_3Cu_3A1O_2(SO_4)_4とフヱドトフ鉱K_2Cu_3O（SO_4)_3における量子状態

摘要

1次元量子磁性体の研究は古く，1931年にH. Betheが発表したスピンの大きさがl/2(S=h/2) の場合の基底状態に関する論文が有名である. この論文では，最近接の反強磁性的Heisenberg相互作用にょり結合した1次元スピン鎖の基底状態の厳密解が示された.そして，この基底状態は，1950年代に朝永振一郎とJ. M. Luttingerにより提案された量子液体(朝永-Luttinger液体）と同じものであることが後にわかり，1970年代にP. W. Andersonが予言したスピン液体状態（量子揺らぎにょる古典的秩序の不在や多数状態の重ね合わせなどの特徴を持つ）の典型例として，現在は理解されている、この状態では第一励起にェネルギーギャップは存在しないため，1次元量子スピン系ではMermin-Wagnerの定理により，有限温度で連続対称性を破る磁気秩序こそ形成されないものの，スピンの大きさによらず，スピン波同様のギャップレス励起が起こるだろうと信じられていた.