バイオマス由来ポリオールを有用化学品に変換する液相固体触媒反応

摘要

1.はじめに循環型低炭素社会の実現には，資源?エネルギーを有効利用する効率的な化学反応プロセスの構築，および二酸化炭素やバイオマスの再資源化など，グリーン?サステイナブルケミストリーを指向した革新的な化学技術の開発が必要である.物質とエネルギーの変換を担う「触媒」は，化学プロセスの90％以上で用いられるともいわれており，目的とする物質を選択的かつスマートに合成する，環境に優しいモノづくりの鍵を握っている.われわれの快適な生活を支える繊維やプラスチックなどの化学製品は，これまで石油を中心とする枯渇性の化石資源から主に生産されていたが，近年，カーボンニュートラルな再生可能資源としてバイオマスの利用が注目されている.中でも，グリセロールやセルロース，リグニンなどの非可食原料を用いた新たな化合物群の製造法開発は，これまでの化石資源に依存する化学プロセスを一新し，カーボンニュートラルな化学品原料への転換による二酸化炭素の排出抑制にも重要な役割を果たすと期待されている.炭化水素を原料とする石油化学プロセスとは異なり，バイオマス由来原料は化合物中の酸素/炭素比が極めて大きいため，有用化学品への変換には酸素原子を選択的に取り除くための新しい触媒プロセスが必要である.