ナノ粒子を用いた省エネ高性能液晶

摘要

1.はじめに金属の微細な粒子を有機物で修飾した金属ナノ粒子は,バルク金属にはない特異な機能を示すことから,次世代の高機能材料として注目を集めている.例えば,自動車排ガス浄化用触媒や燃料電池用の高機能触媒はもとより,次世代の高密度磁気記録材料やバィオ関連への応用も進められている.ー方,液晶ディスプレイ(LCD)は,テレビやコンピューターの表示に多く用いられ,今日10兆円産業となっている.LCDの最大の技術的課題は,低温における高速応答と省エネルギーである.応答速度の向上は,カラーフィルターを用いないフィールドシークェンシャル(FSC)-LCDの実現に繋がり,また,FSC-LCDは赤,緑,青のカラーフィルターを用いないため,原理的に3倍明るい画像が得られ,約30%の省エネルギー化も可能となる.ナノ粒子を分散させた液晶で作製したLCDの電気光学特性に関する研究は,「液晶分子保護金属ナノ粒子」および,「高分子保護金属ナノ粒子」について報告がある.液晶分子保護金属ナノ粒子添加液晶の研究は, 4'-ペンチルビフェニル-4-カルボニトリル(5CB)で保護したパラジウムナノ粒子を液晶に添加することで,電圧-透過率(V-T)カーブが周波数変調を起こすという大変興味深い現象を報告している.しかし,この5CB保護パラジウムナノ粒子は,電圧保持率が低く,実用化には不向きであった.一方,高分子保護金属ナノ粒子添加液晶は,高い電圧保持率を維持するが,液晶に対する相溶性が幾分低いという課題がある.本稿では,液晶分子と高分子の間の分子量領域の化合物,特に機能性化合物として種々用いられているシクロデキストリンを保護剤に用い,低分子保護ナノ粒子のもつ液晶に対する高い相溶性と,高分子保護ナノ粒子のもつ高い電圧保持率を達成する新規ナノ粒子の創製と,これを液晶に分散しその電気光学特性ついて述べる.