低消費電力室温動作型ガス成分分析センサ

摘要

ガスセンサは,これまで有毒ガスや無臭の 一酸化炭素ガスなどの発生現場における危険 回避技術として重要な役割を果たしてきた. しかし近年,環境や健康への関心の高まりと ともに,ガスセンサの用途は多様化し,その 高感度高機能化が求められている.例えば, 飛来する屋外の大気汚染状況や屋内の環境な どをモニタリングするためのセンサや生体内 のガンなど悪性腫と関連するガス種(例えば アセトアルデヒド）を呼気から分析するため のセンサなどがその例である.このようなガ ス種を分析することのできる機器としては, 主にガスクロマトグラフが知られている.し かし,これは高性能であるが,コンパクト性 に欠けることから,容易に持ち運びできない 機器であり,高価でもある.したがって,少 なくとも携帯電話程度の大きさで,気軽に身 の回りの環境状態を調べたり,手軽に呼気か ら日常の健康状態をチェックしたりすること のできる機器としてはほど遠い.このような 機器を実現するには,安価で,小型軽量,繰 り返し使用可能で,高感度かつ分析能力を もった新たなセンサが必要である.さらには, 最近の自然界の振動や体温による温度差など を利用したエネルギーハーベスティング技術 と組み合わせてセンサネットワークを形成するには,1 μW以下で動作する低消費電力動 作型のセンサが必要となってくる.