ヒ素,カドミウム含有土壌の フアイ卜レメディエ_シヨン

摘要

1. はじめに平成15年に土壌汚染対策法が施行されて から10年が経過し,わが国でもさまざまな 土壌汚染対策が実施されている.しかしなが ら自然由来の岩石に由来する重金属等や東日 本大震災に伴う津波堆積物に伴う重金属等に よる土壌汚染問題は,低濃度の汚染が広範囲 に及び,浄化対象となる土壌の体積が莫大な 量となるため,その対処が困難なものになっ ている.これまで適用されてきた掘削除去と その後の埋め立て,土壌洗浄,焼却,熱分解 などの浄化法では体積あたりの浄化費用は一 定のため,対象土壌の量に比例して浄化費用 は増大していく.また,通常掘削除去後の土 壌の浄化は汚染現場とは別の場所で行われる ため,土壌の運搬費用や運搬に伴うニ酸化炭 素排出などの環境負荷も大きなものになって しまう.そのため環境への負荷が少なく,か つ安価で広範囲の浄化を可能とするファイト レメディエ一シヨンの適用が期待されている.ファイトレメディエ一シヨンとは植物の保 有するさまざまな機能を利用して,土壌中の 有害物質を低減または固定化する環境修復技 術である1).このうち,実用化がある程度進 hでいるものは,根から有害物質である重金属等を取り込ませ,植物体内に蓄積させた重 金属等を植物体ごと刈り取る方法(ファイト エクストラクシヨン)である2~4).ファイト エクストラクシヨンを行うためには,体内に 高濃度で重金属等を蓄積させる超蓄積植物 (ハイパーアキュムレーター)の利用が不可欠 である.重金属等に対する超蓄積植物はこれ までにいくつか報告されているが,基本的な 栽培方法が確立され,種子あるいは種苗が安 定して供給できるようになっているものは, モエジマシダ(Pteris vittata L.),八クサンハ タザオ(KArabidopsis halleri ssp. gemmifera)などわずかである.しかしながら,基本的な栽 培方法が確立しているこれらの超蓄積植物に おいても汚染現場レベルでの試験実績を積み 上げ,それに伴う知見やノウハウを蓄積して いくことが重要となっている.