砂丘を越えて沿岸低地を遡上した津波による堆積モデル：北海道胆振海岸東部に分布する17世紀津波堆積物の研究例

摘要

陸上の沿岸低地を遡上した津波堆積物の特徴を考察した報告は多い（例えば，Minoura et al., 1996;七山ほか，2000; Sawai, 2002; Nanayama et al., 2003;平川ほか，2005; Moore et al., 2006; Hawkes et al., 2007; Hori et al., 2007; Moore et al., 2007; Paris et al., 2007;高清水ほか，2007; Choowong et al., 2008; Goto et al., 2008; Komatsubara et al., 2008; Nanayama, 2008; Nishimura, 2008; Morton et al., 2008; Fujino et al., 2010; Matsumoto et al., 2010; Chagué-Goff et al., 2011; Takashimizu et al., 2012)。これらの報告が蓄積されるにつれ津波の浸水範囲，遡上に伴う堆積物の粒径，組成等の変化を地層から復元できるようになった。特に，津波堆積物の粒度特性と海岸線からの距離との関係，津波堆積物の層厚と海岸線からの距離との関係については，多くの報告があり（例えば，西村·宮地，1994;Nanayama and Shigeno, 2006; Hori et al., 2007; Paris et al., 2007; Choowong et al., 2008; Fujino et al., 2008; Matsumoto et al., 2010; Takashimizu et al., 2012)，小規模な地形の起伏の影響を受けて変動しながらも，基本的には内陸方向へ細粒化，薄層化する傾向を示している。しかしながら，過去の津波の流れを考察するうえで重要な要素である古流向を堆積学的手法によぅて復元したものはあまり多くない。それは，初生的にこのタイプの津波堆積物は，一部に斜交葉理を持つことがあるものの，多くは塊状，平行葉埋または極低角斜交葉理を示す堆積物であることが多く（例えば，添田ほか，2004; Moore et al., 2006;高清水ほか，2007; Fujino et al., 2008;後藤?藤野，2008; Naruse et al., 2010; Takashimizu et al., 2012)，斜交葉理から多くの古流向を復元することが困難であるためと考えられる。もちろh，沿岸低地の津波堆積物中の斜交葉理の報告例（例えば，七山ほか，2000; Choowong et al., 2008a, b; Goto et al., 2008;Nanayama et al., 2008; Takashimizu et al., 2012）もある。