塩基除去修復の構成とヒトDNAグリコシラーゼの機能

摘要

DNAの酸化は呼吸の副産物として生じる活性酸素によって自然に起こり、自然突然変異の主な原因になる。 活性酸素は、分子状酸素の還元過程で生じる反応性の高い分子種（スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル）をいう。 生体内ではNADHオキシダーゼ、NADPHpシトクロームCレダクターゼ、キサンチンオキシダーゼなどのスーパーオキシド産生糸、スーパーオキシドの不均化反応や還元反応による過酸化水素産生糸など活性酸素ヤフリーラジカ）L，を発生する酵素系が多く存在する（Ha11iwellandGutteridge1990；Ames ctal．1993）。 大阪市大医学部の井上正廉教授の説では、摂取した酸素の約3％以上は生体内で活性酸素に転換されるという。 しかし、通常では、スーパーオキシドラジカルや過酸化水素はスーパーオキシドデイスムターゼ（SOD）やカタラーゼ、ベルオキシダーゼなどの働きによって消去され、細胞内での活性酸素の生成と消去の間には巧妙なバランスが維持きれている（Fridovich1995）。 ところが、さまざまな要因によって細胞内の活性酸素濃度が増大すると、細胞のレドックス（酸化還元）のバランスは破綻して酸化的状態に傾き、タンパク質、DNA、脂質などの生体分子が非特異的に酸化されるようになる（HalliwellandGutteridge1990）。 遷移金属イオンや電離放射線によるヒドロキシルラジカルの生成も酸化ストレスを起こす例である。