惡性腫瘍に対する重粒子線治療－1重粒子線治療：特に炭素イオン線治療について

摘要

わが国で年間の死亡総数は約98万人で，そのうちがh死亡数は約30％（29万人）とされる。 がh死亡のうち約1／3は原発病巣からの再発?再燃が原因とみなされ，手術療法が限界に達しているいま，放射線治療法への期待が高まっている。 一方，わが国のがh罷患数は年間約50万人であるが，この数は今後も増加傾向を示し，2015年には89万人になると予想されている1）。 こういった数字からも分かるように，がhの制圧は現代社会の強い要請であるといえる。 がh治療において放射線療法の原則は，出来るだけ放射線を病巣に集中させ，周辺正常組織の障害を軽く押えることセある。 そのため，線量集中性の改善を目指して加速器や照射技術などの開発がなされてきたが，最近は，陽子線や重イオン線が，さらに新しい武器として期待されている。 これらの粒子線は，両者共通の特徴として，体内で高線量域（ブラツグピーク）を形成するため病巣への選択的照射を可能にしてくれる。 重イオン線はさらに，陽子線やX線よりも高い生物効果（細胞致死作用）を有しているため，難治がhに対して強力な武器となると期待されている。