山岳地生態系の脆弱性と地生態学研究の現状·課題

摘要

国際山岳年2002年およびその後の活動の夕一ゲットとなっている10年間の課題の一つに山岳地域の（地）生態系の脆弱性がある。 山岳生態系が脆弱であることは，すでに広く知られている（たとえば，Messerli and Ives，1997；Beniston，2000）。 しかし山岳環境下では，地形?地質の変動や土壌侵食が著しく，山岳生態系の成立は，生物の住みかとしての地形·地質·土壌と大きな関係を持っており，これらを含めた地生態系（Leser，1984）が脆弱であるという認識が重要になる。 地生態系の認識の重要性は，これまでにも小泉（1992）らによって強調されてきている。 小泉（1992）は，自然の理解には地形·地質·植生を一連の系として把擁することが重要だと述べるなかで，こうした考え方がすでに1930年代から50年代にかけて，小出（1952）や山田（1955）らによって提唱されていたと述べている。 また同様に日限（1993）は，自然保護区（保全地域）の保護·保全の対一象を非生物的自然（地形·地質·水など）と生物的自然（動物·植物）に大別したうえで，これらが相互に密接な関係を持っていると述べており，他の考え方に従えば，自然保護区や国立公陸＝こおける保護?保全は，地生態系の保護·保全をすすめることだと言い換えることができるだろう。