計算神経科学の到達点と今後

摘要

これまで1年あまりにわたって，学習のアルゴリズムとその脳での実現の可能性について探ってきた．連載?最終回の今回は，脳の働きが計算神経科学の意味でどこまでわかったのか，わかってないのか，これからどういう研究が必要かつ有望か，ミクロからマクロの順に展望してみたい．近年の分子生物学実験技術の進歩はめざましい．ほhのここ2－3年の間で，特定のレセプターや酵素を持つニューロンをターゲットとして，蛍光物質を発現させて可視化したり，カルシウムや膜電位感受性色素を発現させてその活動をモニターしたり，さらに特定の遺伝子をノックアウトしたり，細胞死を起こさせるといったことが当り前のように行われるようになってきた．これからも，昨日までの夢物語を常識にしてしまう新技術はまだどhどh出てきそうである．神経系の仝ニューロンの活動を同時計測するといったことも，線虫やゼブラフィッシュなどでは現実になりつつある．