粘土鉱物へのセシウム吸着機構解明原子?分子レベル構造解析からセシウムの環境挙動を考える

摘要

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震は、関東地方の広い地域にまで大きな被害を与えた。この震災に伴って生じた津波は、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の電源喪失、これに伴う水素爆発事故を引き起こした~(1))。これにより、大量の放射性セシウム(Cs)およびヨウ素(I)などを含む揮発性化合物が広範囲に飛散し、未だに深刻な環境汚染をもたらしている。土壌などへのCs吸脱着機構に関しては、1940-1960年代の大気中核実験、核施設の汚染による環境影響の理解、除染法確立のための基礎的理解として多くの研究がなされているが~(2))、原子、分子レベルでのCs挙動に関する研究はまだ十分とは言えない。そこで我々は、放射光、電子顕微鏡および計算機シミュレーションなどの手法を用い、粘土鉱物を物質材料科学的な視点から解析、Csの粘土への吸着挙動について検討した。これまでにこれらの結果は、土壌廃棄物の減容化手法の開発、あるいは土壌中でのCs安定性評価~(3))などにー部活用されている。