微生物の走化性をつかさどる制御器の性能解析

摘要

「究極の分子ロボットは微生物である」という立場に立ったとき，微生物の運動をつかさどる制御を知ることは，分子ロボット実現のヒントになる．本稿では，このような動機から，微生物の制御器の性能解析について解説する．本稿で対象にするのは，大腸菌やゾウリムシなどの微生物で観察される走化性(chemotaxis)と呼ばれる現象である．図1にそのイメージを示したが，走化性とは，ある化学物質が拡散した環境において，微生物が，化学物質の濃度が最も高い地点，もしくは，最も低い地点へ移動する現象のことである．これは，生命の維持に必要な物質を得るためであったり，また，忌避すべき物質から逃れるために発現する．