分解能の限界にせまる：硬さ－信頼性を高める硬さ試験技術

摘要

硬さとは，概念的には物の強さの程度として示すもので，現在では「ある物体の硬さとは，それが他の物体によって変形を与えようとするとき呈する抵抗の大小を示す尺度である」という定義が妥当とされている．硬さはその定義に従つて，圧子を介して試料に「力」を加え，生じたくぼみの大きさを測定することにより，はじめて得られる工業量である．「硬さ値」としての単位はなく，測定値として有効と考えられる桁数も，物理量などの精密測定とはかなり異なつている．しかしながら，硬さは一般に他の機械的強度との相関性が高く，材料，部品から実機まで，幅広く適用できる最も便利な強度指標である．本稿では，第2章において各種硬さ試験の特徴を整理し，第3章ではその規格を概説する．また，第4章と第5章では，硬さの信頼性向上が，大きくは各種試験機の試験力と変形量測定（直接精度）に，精密には硬さ基準片の均一性や，試験力の負荷条件（間接精度）に懸かっていることを実例により示す．第6章では近年脚光を浴びている超微小硬さ：ナノインデンテーションについての事例を紹介する．