数理計画法アプローチで新地平を拓く制御理論－ロバスト制御のための確率的アプローチ：現状と展望

摘要

制御において確率的アプローチを使うことは目新しいことではない．確率制御やシステム同定という伝統ある分野がある．しかしロバスト制御では長らく確定的アプローチを使うことが主流であった．なぜいま確率的アプローチなのか．おもな理由はつぎの3つだと考えられる：(i)難しい問題を効率的に解くため；(ii)設計者に付加的な情報を与えるため；(iii)隣接諸分野との接点を見出すため．これらの理由について解説する前に，ロバスト制御について確認しておきたい．与えられた制御対象は不確かであり，集合（P(θ)|θ∈Θ）の要素であることはわかっているが，どの要素であるかはわからないものとする．ここでθは不確かさを表わすp次元の実パラメータであり，集合Θ{is contained in}R{sup}p中の値をとる．集合Θの要素，すなわちθの取りうる値は無限にたくさhあるのが普通である．制御対象P(θ)に制御器Kを結合することを考え，構成される制御系（P(θ)，K）がたとえば「漸近安定である」とか「H{sup}∞ノルムがある値未満」のような望ましい性質をもつ場合「条件Cを満たす」と言うことにする．このときロバスト制御で考える問題は，おおまかに言ってつぎの2つである．