没入型バーチャルリアリティによる半側空間無視に対するリハビリテーション支援機器の開発

摘要

半側空間無視（Unilateral Spatial Neglect：USN）とは，大脳半球病巣と反対側の刺激を発見し，報告·反応または刺激方向を向いたりすることが障害される病態である．USNは食事や移動などの自立を阻害するのみでなく，社会復帰や介護者の負担増加の要因にもなり得る．このUSNの病態は，空間領域からいくつかのサブタイプに分類される．身体を中心とした空間表象は大別して，自己が占める空間，つまり身体そのものにより規定される自己身体空間（personal space），身体表面から手をリーチングした数十cmの範囲で身体を取り巻く近位空間（peripersonal space），そして手の届く範囲より外の遠位空間（extrapersonal space）の3つに区分される（図1）．これらの空間領域の無視は症例により程度が異なり，おのおのの空間領域で無視症状が解離して生じる．そのため，患者ごとの多様な病態を前提として，評価や介入手法を構築する必要性が高い．