鋳鉄のきずと欠陥の境界：渦電流試験による鋳鉄表面近傍におけるきずの検出

摘要

渦電流探傷法は金属パイプや板の表面近傍のきずを高速で検出できるので，それらの製造工程や，発電設備などで広く用いられている．渦電流信号は表面きずに対する感度がきわめて高い他に，以下のような特徴がある．①測定コイルと被測定面との距離（リフトオフ）の影響を強く受ける．この性質を利用したμmオーダーの測定分解能をもつ膜厚計が市販されている．②材質の不均一性の影響を受ける．渦電流法は材料の磁気的，電気的性質のわずかな変化に敏感に反応するので，鋳鉄の基地組織の判別やアルミニュウム合金の材質の識別ができる．鋳鉄における渦電流試験は，①鋳肌の凹凸が大きい．②組織の不均一性が圧延材よりも大きいために信号のノイズが多い．③測定が面倒な磁性体ということから探傷法として使われる機会は多くはない．しかしながら非破壊材料評価技術が鋳鉄の材質向上に効果が大きいことは，黒鉛球状化率の音速による評価によって実証されている．本稿では片状黒鉛鋳鉄表面の人工きずと，球状黒鉛鋳鉄の表面直下のドリル孔を測定対象として，鋳鉄に渦電流探傷法を通用する可能性を検討した．