状態図（相図）あれこれ

摘要

水は0°Cで氷になり100°Cで水蒸気になるのは誰でも知つている．また，水と油はお互いに溶け合わない事，水に塩を添加すると0°Cでは凍らずにもっと低い温度まで液体の状態になるので，融雪剤として使用される事も周知の通りである．この様に水にいろいろな物質を添加した時にお互いにどの程度溶け合うか，融点はどの程度変化するか等，温度や成分比によってどの様な状態になるかを示すのが状態図（相図）である．筆者はこの状態図について，実験で確認したり計算によって予測する研究をかれこれ30年以上行っている．主に鉄鋼材料，Ni基，Co基，Cu基，化合物半導体，マイクロソルダー材（はhだ）などの合金系が主体である．状態図を作成する事は地図を作成する事に喩えられるが，道なき道のジャングルを開拓するのと同じように一歩一歩道路を作っていくので時間がかかり，地道な努力が求められる．この様な地味な研究に対して研究費を獲得するのは難しいので，残念ながら世界的にもこの方面の研究者が減少しているのが現状である．しかし，ジャングルの中には石ころだらけでなく時には金やダイアモンドが有るかも知れず，新素材の開発には状態図研究が不可欠である．筆者のこれまでの経験からも状態図はまさに材料開発の宝庫への道標である．本拙稿を通して，状態図に少しでも興味をもっていただければ幸いである．