金属と生体－最近注目の研究動向：メタロミクス－生体金属科学の新展開

摘要

『この論文では，「メタロミクス」を生体金属に関連した研究分野の総合化をはかるための新しい科学領域として提唱します．メタロミクスは，ゲノミクスおよびプロテオミクスと共生する科学でなければなりませh．なぜならば，種々の金属イオンと金属酵素の支援なくしては，遺伝子(DNA, RNA)の合成も，タンパク質の代謝機能発現もできないからです．メタロミクスでは，ゲノミクスにおけるゲノム，プロテオミクスにおけるプロテオームと同様に，金属タンパク質，金属酵素，そしてその他の金属結合生体物質を「メタローム(metallome)」と定義します．』（参考文献1より和訳）これから分るように，メタロミクスは生体中で合成や代謝などの機能に関わる金属（イオン）の役割を解明する科学であるので，日本語では「生体金属支援機能科学」と提案している．また，タンパク質などの生体物質と結合した金属ないしは生体中で生理活性を有する金属（Na{sup}+，K{sup}+，Mg{sup}(2+)，Ca{sup}(2+)など）の総体は，メタローム(metallome)と定義される．