機械や構造物の重要部品·部材には高強度マルテンサイト鋼が使用されている.高速道路や高層建築には高力ボルトが多く使用されているが,大気から侵入する0.1ppm程度の水素により,ある日突然に遅れ破壊するため,使用強度はJIS規格で1000MPaに制限されている.自動車エンジンの弁ばねは2000MPaに近い高強度鋼で作られているが,最近では10億回あるいは100億回の伸縮で疲労破壊が起こることが問題となっている.10億回から命名されたギガサイクル疲労においては,鋼中の介在物を起点とした内部破壊が起こり,今まで1千万回で決定されていた疲労限が消滅する.破壊起点の介在物周辺にはODA(Optically Dark Area)が形成されそれは水素ぜい化と関係する.したがって,超鉄鋼研究の第1期で進めてきた1500MPa 超扱高強度マルテンサイト鋼の研究は遅れ破壊特性すなわち水素ぜい化抵抗と疲労強度を向上させることを目標としたが,実際は水素との戦いであった(以後,遅れ破壊と水素ぜい化は同じ現象とする).
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